顔面痙攣 ~入院中の出来事~

気づき

顔面痙攣の手術に伴い、手術の前後併せて10日間入院をしました。

手術の前日から入院。
手術中は口腔内へ気道確保のための器具が入るため、口腔内の衛生状態にも気を配ります。一ヶ月前に準備として口腔内の検診がありましたが、前日は歯垢除去などの処置がありました。そして、術前のMRIを再度撮影、あとはシャワーで翌日に備えました。

術後は体調の急変に備えICUで一日過ごし、血圧や酸素濃度、点滴など様々な器具が体につながっていました。

そのあと一般病棟に移りましたが、そこは『脳神経外科』病棟。遠い昔ですが、以前入院したことのある病棟とは少し様子が異なっていました。
大部屋だった私の病室には検査入院で入院される方もいて、1~2日で退院できるにも関わらず、入院中は辛そうにしていました。検査の内容でしょうか?食欲も無く、吐き気や頭痛を訴えていました。別の病室からは絶えず苦しそうな声が聞こえてきます。

大部屋といっても、一つ一つのベットを囲むように取り付けてあるカーテンは絶えず閉まったままでした。隣のベットの方の顔を見ることもなく一日過ごしていましたが、何かのきっかけで同年代の女性と仲良くなりました。彼女は頸動脈狭窄症という病気で手術を受けていました。首の違和感から受診し、別の治療をしていましたが、念のために・・・と撮ったCT(MRI?)で頸動脈の異常が見つかったそうです。彼女の手術の様子は画像として保存してあり、彼女はそれを見せてもらっていました。一部彼女が録画した画像は私にも見せてくれました。テレビで見る手術の様子 そのまんまでした。血管から取り出された黄色い油の塊は大きく、通常の血流を100%とすると、80%を占めていたそうです。また、その一部はすでに剥がれる一歩手前で、いつ脳梗塞を起こしてもおかしくない状態だったそうです。
彼女には自覚症状がなく、毎年の人間ドックでも全く分からなかったそうです。別の原因で行った病院で、念の為にと行った検査で分かった病気でした。ただ、親族には動脈硬化と言われている方が多くいるそうで、家族にそういった病気があるかと受診票などに書いてある理由がやっと分かりました。

彼女と私は術後の経過も良く、話しも合い、食事の時間以外はずっとお喋りをして過ごしていました。

退院予定日の3日前、隣りの病室で一人の方がコロナにかかっていました。陽性反応後、別の病棟へ移られたそうですが、私達は部屋から出ることが難しくなり、売店はもちろん 冷蔵庫とつながっているテレビカードの購入もできなくなり、必要なものは看護師さんにお願いするように言われました。

退院予定2日前、隣りの部屋から一人 私達の部屋へ移ってこられました。

退院予定1日前、夕方シャワーへ行こうとすると、看護師さんに止められました。前日受けたPCR検査。嫌な予感がして、『わたし?』言葉が自然に出ていました。
これだけで話しが通じてしまいました。今、ブログを書きながら不思議に感じます。同時に入院中ずっとコロナの陰が病院内にあり、誰もがアンテナを張っていたのかも知れないとも思います。
『違うの。別の人だけど、今シャワーに入ると移るかも知れないから。』
すぐに分かりました。
私はすぐに部屋に入る事が出来ずに、『少しの間 ここにいてもいいですか?』と言って廊下にある長椅子に座って、窓の外を見ていました。
『院内感染』・・・明日が退院だったのに、本当に起こった。
ただ、どうのこうのと絶対に言ってはいけない。皆んながそれぞれの病気でここに来ている。皆んな苦しい思いをしている。深呼吸をして、静かに受け止めていました。

暫くすると、さっきの看護師さんが戻ってきました。私に紙を渡しました。
『濃厚接触者』『外出禁止』の文字が目に飛び込んで来ました。
「ごめんなさいね、濃厚接触者になっているから、部屋の中に入ってもらってもいいですか?」
とっても申し訳なさそうに小さな声で話しかけてくれました。
「カーテンで ある程度防げるし、窓も自由に開けてね」と言ってくれます。
「はい」と、私は自分のベットに戻りました。

退院を一番喜んでくれていた母にメールを打ちました。退院しても暫くは誰にも会えない。数年ぶりの仕事のないお正月。一緒にゆっくり過ごせる事を楽しみにしてくれていただろう、と申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

就寝時間前、一人の看護師さんがカーテンの向こうから私の名前を呼んでいました。カーテンを開けて入ってくると、胸の名札を見せながら『婦長の○○です』とおっしゃり、陽性反応は間違いだったとの事。正確にはその後の詳しい検査で、以前のコロナ感染の影響で一端は陽性が出ていたが、現時点では感染していなかったとのことでした。
『良かったー』と言うなり、涙が一気に溢れてきました。
『詳しい検査をしないで、大変な思いをさせてごめんなさいね。』と他の看護師さん同様、優しい笑顔です。私も多分泣きながらの笑顔だったと思います。
『ありがとうございます。』『ありがとうございます。』と感謝の言葉しか出てきませんでした。

顔面痙攣の手術の為の入院でしたが、色々な経験が出来たような気がします。あとになって思い返しても新しい発見が出来るような経験でした。

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