母の思い出~1
私は7歳の時に交通事故にあいました。タイヤに引きずられ胸と顎の肉が削がれ、治療のため半年間入院しました。入院中の私には付き添いのおばあさんがいました。半年間の入院生活は断片的にしか覚えていません。同じ病室の女の子と屋上で歌ったり、看護婦さんの部屋へ遊びに行ったり、楽しかった思い出もあります。が、一つだけ、とっても寂しかった記憶があります。それは、あるとき一週間母が病院に来てくれませんでした。私は付き添いのおばあさんにお願いし、母に電話をしてもらいました。そして「何で来てくれないの?」と聞きました。すると、「帰るとき、いつもあなたが寂しそうな顔をするから・・・」と言われました。私は「もう寂しい顔をしないから、来て」と泣きながらお願いしました。
小学校3年生の時、交通事故の傷跡を少しでもきれいにするため、手術を受けました。手術の当日と退院の日は母が一緒にいてくれました。でも入院期間中ほとんど一人で過ごしていました。その時は寂しいと感じていませんでした。が、後で思い返し、きっと母は仕事を優先していたんだ。と思い込んでいました。
最近になって手術を受けた頃何があったのかを聞きました。
私には弟が2人いるのですが、当時は5歳と7歳。親戚の家に預け母は最初の頃東京の私の病院で一緒に寝泊まりしてくれていたそうです。ですが、弟たちが預け先の親戚に馴染まず家に帰りたがっているということで、同じ病室にいた男の子のお母さんが「娘さんの面倒を見てあげるから、帰りなさい。」と言ってくれたそうです。
きっと、交通事故で入院していた時も何かあったのかも知れません。弟たちが当時は3歳と5歳。交通事故にあった娘を思いながらも、幼い弟や仕事、他にも私が知らない沢山の問題を抱えていたんだと思います。母の言った一言や覚えている場面だけで、私は自分の中に間違った事実を作ってしまっていました。
大人になった今、過去に起こった出来事の意味づけを変えることで、自分にとって寂しい・辛い・悲しい経験が全く違う出来事に変化することに気づきました。
母は3人の子供全員に愛情を持ち、時には辛い思いをしながらも出来る限りの事をしてくれていたんだと感じました。そして、そんな母を応援し助けてくれた人がいたんだと、私は母を誇りに思いました。
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