Sさんとの交流3

介護

老人ホームへの入所

今日久しぶりにSさんに会いました。
どうしているかな?とずっと気になっていたので、会えるのを楽しみにしていました。
いつもの通り、朝仕事前にご利用者全員の状況を記録で確認してみました。すると、Sさんが来月入所が決まったと書かれていました。

午前中Sさんの入浴がありました。いつも通りにSさんはゆったりお風呂につかり、出てから着替えを手伝いました。
思い切って、元気?と聞いてみました。Sさんは首を横に振り、黙って私にしがみついてきました。私は何も聞くことが出来ませんでした。

帰る前、Sさんは持っていた小銭入れで私に自販機でジュースを買って欲しいと催促しました。私はSさんが選んだレモンスカッシュのボタンを押しました。Sさんはもう一つ買うようにと私に手で合図しました。そしてもう一つのレモンスカッシュを私に持たせてくれました。私はSさんからのプレゼントを「ありがとう。」と笑顔いっぱいで受け取りました。

帰り際、私はSさん部屋に寄り、もう一度レモンスカッシュのお礼を言いました。今度はSさんが嬉しそうに 「気をつけてね。」と私に言ってくれました。

帰り道、今日話をした他のお二人の話を思い出していました。
一人は最近施設に入ったご主人を亡くされたHさん、一人は口うるさく元気だった奥様が脳梗塞で倒れそのまま施設に入られたSSさんです。
Hさんはしっかり者でご主人を心から『立派な人』として尊敬していて、一度も喧嘩なんかしたことがない。喧嘩なんかしてもなーんにも良いことなんかない。といつも話してくれました。ここにずっと泊まったまま家に帰れない事も、笑いながらもしっかりした口調で『仕方ないよ』と言っています。私はHさんの話を聞きながら、初めてHさんを抱きしめました。すると、突然、『何で死んじゃったんだろう?』と言って、気丈なHさんが初めて涙を流しました。
また、SSさんは施設にいる奥さんに会いたいとは一言も言わず、施設に宿泊したり家に帰ったりを繰り返しています。「家に帰ってもだーれもいない。」といつも私に言っています。今日私は「奥さんに会いたい?」と聞くと、会いたいと言います。「じゃあ、どうして会いに行きたいと言わないの?」と聞くと、無理だからと答えます。

年をとるとは本当にこうゆう事なのでしょうか?自分の意思、思い、願いがあるのに全てを周りの人たちに決められてしまうは何故なのでしょうか?皆んなが望んでいることはごくごく当たり前な事、誰にでも理解できる普通の気持ちなのに、何故それは叶わない事なのでしょうか?
私はここでの派遣の仕事が来月で終了となります。老人ホームとは異なるここでの介護で私はいろいろな現実を知り、また麻痺になっても認知症になっても、話をすることが出来なくなっても様々な生活があることを知りました。

あともう一ヶ月、自分の仕事だけして終わる事も出来ます。でも、私が聞いた方たちの願いを伝えてみようと考えています。本当は知っているかも知れない、でも知らないかも知れない。若い人が自由に生きる権利を持ち、年を重ねた人は不自由に生きることを強いられる。人がその仕組みを作っているのであれば、そうでない仕組みを作る事も可能なはずです。
年老いた方たちの笑顔は若い人たちの明るい未来なのではないでしょうか。

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