『逃げたら追いかけてくる』
毎週土曜日の夜から日曜日にかけての重度障碍者の訪問介護の仕事。先月から始まった夜勤の仕事で、同じく初めての重度障碍者への支援の仕事。
実は、先週一週間続けようか、どうしようかと迷っていた。
当初の募集要項とは異なり、時給は300円低く、研修中は更に100円低い。暫くは思った程の収入にならない。勤務日は入室してからの全ての動きが事細かに決められていて、夜到着したら玄関のドアを閉めてから挨拶する。ドアの閉め方もしっかり引っ張りカギを回し、チェーンを掛ける。玄関で上着を置いて、洗面所で手洗いうがいにマスク交換。
部屋に入ってからは排尿・バイタルチェック・顔拭き・身体拭き。顔の拭き方、体の拭き方は順番も拭き方も決まっており、そこにご本人の『拭き足りない』『もっと強く/優しく』が加わり、クリームを塗るか塗らないか、かけ布団は何にするか、首周りのタオルはどれにするか、足下のクッションは何にするか、が加わる。そして、体の位置を真っすぐになるまで何度も微調整する。
その後は痰の吸引。
吸引後は枕を整え血圧を測るが、次の血圧測定はいつか、ベットの角度は何度にするか、全てご本人からの指示で行う。最低でも一時間おきのバイタルチェック。その間も起きてずっと見守り。
前回の夜中には、顔の表情が苦しそうで、眠っているのか苦しんでいるのか分からず、そばに行って暫く様子を伺ったあと、ご本人が目を開けたので『吸引した方が良いか』伺うと、『しない』との事。それでも、『苦しそうだから…』と言ってみると、『オレノイシ(俺の意思)!!!』と大きな声。何事かと隣の部屋から奥様が起きてきて、とりあえず吸引して、『初めのうちは気にしてくれる方が安心だから』と言って下さる。でも、私のメンタルは急降下。
帰宅してからは当日の報告書をグループに送り、研修の感想を書かなくてはいけない。また月一回のZoomでの障害者研修のレポートを書かなくてはならない。
昨日はその障害者研修のレポートの締切日で夜中までかかって仕上げた。約1時間のZoom研修を録画で受講し、レポートを書くのは私にとって大きな負担になっている。昨日の夜、『もう辞めようかな』という考えが頭に浮かんでからは、レポートを書くのが嫌で嫌でたまらなかった。それでも夜中2時までかかって送信した。
朝、平日の会社勤務のための通勤中。駅から会社まで自転車をこぎながら、気分は爽快だった。昨日の嫌な気持ちが吹っ飛んでいる。
『嫌な事、辛いこと、面倒な事は逃げたら追いかけてくる。でも受け入れたら消えていく。』
『今までも、ずっとそうだったなー』と今までのことが頭に浮かんだ。
睡眠時間3~4時間を何年も続けた。お休みのない生活を何年も続けた。そして子供3人は十分な教育を受け、就職し、立派になった。その間辛いと思ったことは一度もなかった。あっという間に時間が過ぎた。
私はちっとも偉くない。ただ少しだけ、他の人より心と身体が丈夫に出来ているかも知れないと思う。特別な訓練をしたことはない。特別な食事もしていない。ただ普通に生活しているだけ。
何のお陰?誰のお陰?と考えてみる。『そうだ!丈夫に生んで、育ててくれた母に感謝しなくちゃ』と思った。そして、『もう少し、重度障碍者の訪問介護の仕事を続けてみようかな』と思った。
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