祖母の墓参り

家族

私の祖母は35年前、76歳の時自ら命を絶ちました。
命を絶つ前、「自分が死んだら、墓参りに来てくれる?」と母に電話で聞いたそうです。「何言っているのよ」と言いながらも「行くわよ」と返事をした後、少しして祖母は亡くなりました。

私は子供の時、毎年父の車で新潟の祖母の家に遊びに行っていました。祖母は長男の家族と一緒に住んでいました。私の記憶の中ではいつも優しく、一緒に住んでいる二人の孫をとても可愛がり、幸せそうでした。
いつからか、母の5人の兄弟の関係がぎくしゃくしだし、祖母は遠慮しながら、その家で生活するようになりました。私が子供が生まれた時、祖母に会いに行こうと電話をすると、喜んでいる祖母の後ろから、「来るな!」と言う大きな声が聞こえました。私の叔父さんでした。私は生まれた子供のアルバムを祖母に送りました。祖母は私に手紙を書いてくれました。誰の悪口も書かず、ただ曾孫に会えないことが残念だということが書かれていました。

それからも母の兄弟間の仲たがいは酷くなり、私は叔父さん、叔母さん、従兄弟と完全に疎遠になってしまいました。母は、何度か新潟を離れ母と一緒に住むことを勧めましたが、祖母は生まれ育った土地を離れたくない。とそこに留まっていました。長男夫婦から虐待とも言える扱いをされながらもその家を離れませんでした。そして、ある日、自ら命を絶ってしまいました。

色々な事が絡み合い、ぐちゃぐちゃになっていて、その当時は誰も祖母を助けてあげることが出来ませんでした。今は叔父さんも叔母さんも亡くなりましたが、残された私達は互いの傷を察し合い、お互いの傷に触れずに生活しています。

そんな中、母は35年間ずっと墓参りを続けていました。新潟の祖母のお墓まで何時間もかけ、一人でそっと墓参りを続けていました。ずっと祖母との約束を守ってきました。

今日はしばらくぶりに母と公園を歩きました。そして歩きながら祖母の話をしました。「私は絶対に自分で命を絶ったりしない!」と昔言っていた母が、「おばあちゃんの気持ちが分かる気がする」と私に言いました。
「おばあちゃん、きっと上から、『和子、元気でやってるかい?』って言ってるよ!」と私が言うと、母は「和子!まだこっちに来るな!って言ってるね」と言いました。そして、次のお墓参りは一緒に行く約束をしました。

その後、母は一人の友人の話をしました。
人の気持ちを考えず、ずけずけと思った事を言う人なのですが(よく言えば屈託のない、おおらかな人なのですが・・・)、大工さんをしていたご主人と病気で亡くなった息子さんにかけていた保険金のお蔭で、80歳過ぎても麻雀をしたり、カラオケに行ったりと元気に楽しく生活しているそうです。持っているお金は全て自分の為に使い、娘2人の事は全く気に掛けていないそうです。先日も車の免許を返し、車を手放したそうですが、母が「車が無くなって不便になるね」と言うと、「タクシーがあるじゃん!」と言われ、タクシー代が高いと思っていた母には思いがけない返答だったようです。「神様は何でこんなに不公平な事をするんだろう?」と母は私に言いました。
「もしかしたら、次に生まれ変わったら、すごい苦労をするのかもよ」「おばあちゃんも、もしかしたらもう生まれ変わってて、今幸せにしているかも知れないよ」と私が言うと、「本当に生まれ変われるならね。」と母は言いました。

私はいつか母に宇宙の法則の話をしたいと思いました。30年以上も経って、父が死んだ理由を私に教えてくれた「宇宙の法則」です。全ての人は目的を持って生まれ、それは経験を辿ることによって見つかります。全ての人は「存在」すること自体に価値があり、自分で自分を愛し、周りの人をも幸せにすることが出来るということを知ってもらいたいと思いました。そして、もう一つ。照れくさいけれど、母のところに生まれて来たことに「ありがとう」と伝えようと思っています。

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